machijikan | vol.03

三翠会

三翠会

渡り鳥タゲリが来る田んぼを、未来へつなげる

田んぼの新鮮な風と緑が、地球を守る

湘南タゲリ米が育つ田んぼがあるのは、茅ヶ崎市西久保地区。取材で訪れた日は太陽が照りつける真夏日でしたが、田んぼ周辺はさわやかな風が吹き抜け、町中とは違う清涼感がありました。

「田んぼの風は、とても気持ちが良いでしょう?」と声を掛けてくれたのは、三翠会の代表、鈴木國臣さん。水をたたえた田んぼの周辺は、気化熱の作用によりマイナス3度ほど涼しくなるのだそうです。稲が光合成によって作り出した酸素をたっぷり含む風なので、空気がおいしく感じられます。青田風という季語もある通り、青々と茂った稲の上を吹く風は、昔から日本の夏の貴重な涼でした。

「気温の上がりすぎを抑えながら、稲が二酸化炭素を吸って成長する。田んぼは、温暖化対策をしてくれているんです」と、鈴木さんが教えてくれました。

田んぼの新鮮な風と緑が、地球を守る 田んぼの新鮮な風と緑が、地球を守る
虫・植物のいるところ 虫・植物のいるところ

虫・植物のいるところ

現在、湘南タゲリ米の田んぼでは必要最小限の除草剤のみを使用し、殺虫剤は使用していません。「小魚やタニシ、アメンボなど、たくさんの生きものが生息しています」と教えてくれたのは、精力的に農作業を応援している三堀浩行さん。トンボだけでも5~6種類が観察できるようになりました。

最近はジャンボタニシ、ナガエツルノゲイトウなど外来種の襲来にも苦慮している、と田んぼの生態系を保つ大変さを語ります。特にジャンボタニシは、全国的に大きな問題となっている強力な外来種です。湘南タゲリ米の田んぼでは、三堀さんたちが田んぼ全体をくまなく目視するローラー作戦で徹底的に駆除を行いました。被害ゼロを達成しているのは、とても貴重な例だそうです。田んぼを守る気迫が伝わってきます。

地道な努力を重ねた結果、三翠会で管理しているビオトープの周辺には、茅ヶ崎では珍しくなってしまった草花も群生するようになりました。繊細なサンクチュアリなので、マナーを大切に。静かに見守っていきたいですね。

「湘南タゲリ米」は国内版フェアトレード

三翠会の活動が始まったのは2000年。宅地化、商業地化が進む湘南地域では田んぼが減り、シベリアから来る渡り鳥「タゲリ」の越冬地が減少していました。「タゲリは田んぼに生息する虫などを目当てに飛来します。タゲリを守るためには、生物多様性が保たれた田んぼを守ることが必要でした」と、鈴木さんは語ります。

田んぼの減少をくい止めるためには、地域の生産者が耕作を続けていける仕組みを作らなければいけない、と鈴木さんたちは考えました。

そこで三翠会では、保全対象の田んぼのお米を市価より高く買い取り、趣旨に賛同してくれた方に湘南タゲリ米を売るという、いわば国内版のフェアトレードを行うことにしました。農家の米づくりを支え、タゲリの飛来地である田んぼを守るプロジェクトです。

現在は、20数戸の農家がプロジェクトに参加し、互いに協力をしながらキヌヒカリや黒米などを生産しています。1袋(5キロ)のお米を食べることで、およそ8畳の田んぼを守ることができるそうです。

「湘南タゲリ米」は国内版フェアトレード 「湘南タゲリ米」は国内版フェアトレード
茅ヶ崎の新名物も続々と誕生 茅ヶ崎の新名物も続々と誕生

茅ヶ崎の新名物も続々と誕生

茅ヶ崎で生まれ育った湘南タゲリ米は、お米を買って食べることで田んぼの保全に協力することができます。さらに最近は、地元・茅ヶ崎のお店とコラボレーションをした名産品が続々と誕生していいます。

茅ヶ崎市が進めるブランド化事業「Choice! CHIGASAKI」に認定されているのは、人気のスイーツ店「レプラコーン」による「茅ヶ崎サーフサンド」。湘南タゲリ米の玄米粉をプレスサンドクッキーにし、生チョコとカラメルをたっぷり挟んだお菓子です。同店で開発した「湘南タゲリ米のバウムクーヘン」も、米粉ならではのふんわりもっちりした食感が人気です。

和菓子派の方には、湘南タゲリ米の古代米を使ったおまんじゅう「茅ヶ崎そだち」がおススメ。茅ヶ崎の老舗「湘南富士美」が作る、深みのある味わいが楽しめます。

「お米を食べて自然保護」が、茅ヶ崎全体に広がりながら、さらにおいしく進化しています。

三翠会事務局  
◎住所/〒253-0083 茅ヶ崎市西久保 ※問い合わせは三翠会のフェイスブックページから、あるいはホームページへ
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