machijikan | vol.03

茅ヶ崎のシン夏野菜「トルコナス」

茅ヶ崎のシン夏野菜「トルコナス」

英語でナスは「eggplant(卵の植物)」。白いトルコナスは、まさに枝に卵が実っているようです

若手農業家3人の愛と情熱が詰まった白いナス

白くてツヤツヤで、見た目はまるで大きな卵のよう。とろける口どけがおいしい「トルコナス」をご覧になったことありますか? 茅ヶ崎の新たな夏の名産品にしようと、若手農業家3人が大事に育てています。

四国の農家で修業し、新規就農した静かな努力家、脇祥平さん。自宅でトルコナスを食べるときは「焼き浸し」。

四国の農家で修業し、新規就農した静かな努力家、脇祥平さん。自宅でトルコナスを食べるときは「焼き浸し」。

茅ヶ崎の農業を知り尽くしている熱きリーダー、清水俊朗さん。自宅でトルコナスを食べるときは「アヒージョ」。

茅ヶ崎の農業を知り尽くしている熱きリーダー、清水俊朗さん。自宅でトルコナスを食べるときは「アヒージョ」。

ビジネスの世界を経て、起業家のセンスも持つ就農者、米山元貴さん。自宅でトルコナスを食べるときは「カレー」。

ビジネスの世界を経て、起業家のセンスも持つ就農者、米山元貴さん。自宅でトルコナスを食べるときは「カレー」。

茅ヶ崎だけで出荷されている「白いナス」

ツヤツヤの白い姿が特徴のトルコナス。通常のナスよりも大ぶりで、350mlの缶ビールぐらいのサイズです。加熱すると、まるで新感覚のスイーツのようなとろ~りとろける食感に。イタリア料理とも日本料理とも相性がよく、人気上昇中です。2021年夏に「かながわブランド」にも認定されました。

実はこのトルコナス、茅ヶ崎の若手農家が、初めて市場出荷(共販)をしたといわれています。「新しい茅ヶ崎の名産品を、自分たちで作っていこう!」という情熱のもと、毎日手間をかけて栽培にいそしんでいます。

収穫直前のトルコナス。大きさは、350mlの缶ビールぐらい。

収穫直前のトルコナス。大きさは、350mlの缶ビールぐらい。

トルコナス生産者の農場 トルコナス生産者の農場

自慢の白いお肌を守るために
とても手間のかかる作業

まず始めに、トルコナス生産者のひとり、脇祥平さんの農場を訪ねました。

脇さんは、香川県のナス農家で修行をした後、茅ヶ崎で新規就農をしました。新しく農業を始めるにあたって軸となる作物を探していたところ、地域の仲間やJAに紹介されてトルコナスに出会ったそうです。

トルコナスはとても繊細で、手間のかかる作物です。トルコナス自身の茎や葉で擦れるだけで、自慢の白いお肌にシミがついてしまうので、「葉をこまめに切ることが大事なんです」と脇さん。

さらに日照不足だと緑色っぽくなってしまうので、ひとつひとつの実への日当たりを考えることも必要なのだそうです。
最近では徐々に販売量が増え、お客様から「おいしかった!」という声をいただく機会も増えているとのこと。「期待に応えていきたいです」と優しく微笑んでくれました。

試行錯誤を重ねて8年
風にそよぐ「ソルゴー」がポイント

次に訪ねたのは、若手3人のリーダー格、清水俊朗さん。江戸時代から続く農家の後継者として活躍しています。「親の代と同じ物を作るのではつまらない」と30本の苗木からトルコナスの試験栽培をスタートし、今では毎日100ケースを出荷しています。

世話が大変なので、今までは家庭菜園向きとされてきたトルコナス。広い畑での栽培方法を確立するのは全国初のチャレンジです。この8年で、さまざまな工夫を重ねてきました。

工夫のひとつが、畑をぐるりと囲むように植えられている植物「ソルゴー」です。初めは害虫対策として植えましたが、清水さんは強い風の吹き抜けを防ぐ防風効果に注目。悩みの種だった、土ぼこりによる傷の被害が大幅に少なくなりました。

トルコナスの栽培にチャレンジしている理由は、「みんながやっていないモノを作るのが面白いから!」と太陽のように明るく笑う清水さん。「『茅ヶ崎の夏野菜といえばトルコナス』と言われるように育てたいですね」と未来への展望を語ってくれました。

トルコナス生産者 ソルゴー
トルコナス生産者 トルコナス

「これは普通のナスじゃない!」
販路拡大も、若手パワーで切り拓く

最後に、集荷場でお話を伺ったのは米山元貴さん。祖父母の畑を引き継ぐ形でサラリーマンから転職し、新規就農6年目を迎えます。自分と同世代の若手が栽培の中心となっていることに魅力を感じて、トルコナスを農園の看板商品となる作物として選びました。

3人のうち、市北部に農場があるのは米山さんだけ。トルコナスは夜間気温が25度を超えると成長スピードがアップするため、同じ市内でも南部と北部では収穫時期に差があるそうです。「気温はやや低いですが、風が弱いのは北部の利点ですね」と米山さん。自然条件のちょっとした違いを見極めながら、若手3人で情報交換をしています。

初めて作ったトルコナスを試食した時、「これは普通のナスじゃない!」と衝撃を受けたという米山さん。出荷するトルコナスを扱う丁寧な手つきに、愛情と意気込みを感じました。

栽培はもちろん、出荷にあたっての規格作り、販路の確保など、何もかもを試行錯誤しながら道を切り拓いてきました。「今後はどうブランド化していくのか、考えながら進んでいきたいですね」と課題を見据えています。
農業者として、経営者として、頼もしく活躍している3人。挑戦は、まだまだ続きます。

トルコナスはどこで買えるの?

神奈川県内、静岡県東部、東京都内へ市場出荷しているので、生協やスーパー、百貨店などで出会うチャンスがあります。通常のナスに比べて流通数が少ないので、見つけたらラッキー!と思って買ってみてください。

茅ヶ崎市内のミアクチーナ茅ヶ崎旭が丘店・茅ヶ崎高田店、寒川町のわいわい市寒川店では、売っていることが比較的多いようです。
トルコナスの出荷シーズンは、6月末~9月中旬が目安です。

トルコナス販売
ナゾの建物で作業する様子

トルコナスのステーキ。このぐらい焦げ目が付けば食べ頃!

トルコナスのおいしい食べ方は?

トルコナスは油との相性が抜群なので、炒め物やパスタに入れるとおいしく仕上がります。紫色のナスと違って汁が黒くならないので、皮をむかずにお味噌汁の具にするのもおすすめです。

農家イチオシの、「トルコナスのステーキ」のレシピを紹介します。皮むき不要!ざっくり切って焼くだけなので、とても簡単です。

★トルコナスのステーキ★
トルコナスを縦に厚切りし、油(オリーブオイル、ごま油、バターなどお好みで)をたっぷり引いたフライパンで、片面ずつ焼き上げます。
火加減にもよりますが、片面3~4分ほど。焦げ目が付いたら蓋をして、じっくり焼き上げましょう。

ショウガ醤油やめんつゆ、ドレッシングなどをかけてお召し上がりください。外はカリッと、中はとろ~り。クセがなく、大人も子どももトリコ(トルコ?)になる味です。冷蔵庫で冷やして、翌日に食べてもおいしいですよ。