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『トマトのかねっこ(金子農園)』

「トマトのかねっこ」が育む
地域との絆と信頼
茅ヶ崎市浜之郷の金子農園は、長年この地でトマト作りを続け、地域の方々との間に深い信頼関係を築いています。
現在営農の中心を担うのは、控えめであまり表に出たがらないシャイな7代目・金子磯哉さんと奥さんの恵子さん。7代目というのはたどれる範囲でということで、菩提(ぼだい)寺の災禍で過去帳が失われていなければ、何代さかのぼれるか分からないというぐらいの旧家です。

写真に撮られるのもレアだとか




それだけでも地域に根を下ろしていることが分かりますが、絆をつなぐのは何といってもその低農薬作物への信頼感です。主力のミニトマト「エコスイート」は自宅前の無人販売機(トマトのかねっこ)で販売していますが、週3日、午前9時からというのに、時間前から行列ができています。並ぶのは年配の方が多く「孫に食べさせたい」「トマト嫌いの子が食べられるようになった」などの声が寄せられています。それぐらいこのトマトはおいしいのですね!
「エコスイート」を追求する歩み
私もいただいてみました。
とにかくおいしい! 金子農園さんが育てたミニトマトを一つ口に入れたときの驚き! 皮が薄く、軽くかんでも口いっぱいに自然な甘みと香りが広がります。それが「エコスイート」の特長だとしても、このおいしさには秘密があるはずです。
磯哉さんは、父・淳一さんから受け継いだトマト栽培の伝統と技術をさらに発展させ、独自の営農を試行錯誤してきました。その結果たどりついたのが、温室でのミニトマト水耕栽培。そして品種は「エコスイート」。徐々に増やして今4棟ある温室のうち、3棟を「エコスイート」専用とするくらいこの品種にほれ込んでいます。
残る1棟では大玉トマト「みそら109」を栽培しています。今では9人ものパートを雇うまでの生産量になりました。




水質改善装置を導入
金子農園のトマトは水耕栽培で育てています。こだわりは「水」。自宅の井戸水はpH値が高く、トマト栽培には不向きでした。「苦みを感じる」などの声も届きました。
そこで、水質を改善しようと水質改善装置を導入し、トマト栽培の環境が整いました。
水質管理を徹底したことにより、トマトの栽培が厳しい期間でも、金子農園のトマトは順調に育ちました。「水について考え抜いた成果です」と金子さんは語ります。
金子農園が目指すもの
「トマトのかねっこ」は金子農園の愛称です。令和7年7月7日開業の「道の駅 湘南ちがさき」への出荷に合わせ、和歌山市の農業専門デザイナーにロゴマークを依頼して作りました。
ミニトマト「エコスイート」は、自宅前の無人販売機を柱に販売してます。スーパー「マックスバリュエクスプレス」(茅ヶ崎若松店、茅ヶ崎浜須賀店、寒川中瀬店)にも並びます。ほかにも、JAタウンでのネット販売、茅ヶ崎青果市場への出荷など、販路を広げています。
金子農園が目指すものは何なのでしょうか。金子さんに聞いてみました。





「うちは無人販売機による直売がメインです。スーパーへの出荷は余剰分のみで、少量しか出していません。地元のお客さまを大切に思うからです。食の安全とおいしさには徹底的にこだわっていくつもりです。また、環境保全を目指して低農薬・水耕栽培を追い続けているのですが、まだまだ課題が多く、試行錯誤の段階です。水質改善装置の導入や地域に密着した活動など、新たな農業モデルとして茅ヶ崎から発信できたらいいな、と思っています」
学校給食の低農薬化、地産地消などが取りざたされ、茅ヶ崎市内でも広がりを見せる中、金子農園さんの取り組みは地域全体の食環境の改善につながる可能性を示しているのではないでしょうか。
トマトのかねっこ(金子農園)
◎住所/近隣の方々へご迷惑が掛かるため、掲載できません。販売場所はインスタグラムを確認してください。
◎無人販売機による販売時間/3日に1度の販売・9:00〜在庫がなくなるまで
◎インスタグラム/https://www.instagram.com/genki.tomato/
『石坂園』

茅ヶ崎の地で紡ぐ園芸農家の思い
「年間100品目」
少量多品目にかける戦略
今回お訪ねした茅ヶ崎市浜之郷にある石坂園は、花・野菜苗の生産直売農家です。
祖父の代から花卉(切り花)栽培を始め、石坂隆治さんの父親の代にポット苗、鉢花へ移行したのち、ガーデニングブームが起こりました。ブームが落ち着いたころ、隆治さんは市場と小売り、どちらに軸足を置くか考えるようになりました。
そして「農地がさほど広くないこともあり、一種類の作物を大量生産するより、多品目を少量生産し、直売・小売りに特化するほうが有利」と決断しました。
春先の取り扱い品目は野菜・花それぞれ20~30種類。年間トータルでおよそ100品目の苗を生産しています。





伺ったときは、ペチュニア、マリーゴールド、バーベナなどの花壇苗、トマト、ナス、ピーマン、バジルなどの野菜苗、そしてカーネーションやガーベラの母の日用ギフトなど多彩な作物が、温室内に所狭しと並んでいて、少量多品種にかける戦略が明確に読みとれました。
これだけの種類の苗を育てるとなると、気になるのが作物ごとの管理です。
隆治さんが大切にしているのが「根っこの健康」です。地上部が多少小さくても根がしっかりしていれば長持ちするといいます。逆に根が弱っていると、あとが続きません。お客さんの家でも丈夫に育つのは、根が健康だから。「根っこが一番大事」というのが、隆治さんの哲学になっています。
また、石坂園では、水やりや肥料の量など栽培管理に神経を使い、それぞれの苗によって管理方法を変えています。それが最大の苦労ということですが、ひと苗ひと苗にかける愛情が感じられました。
40種のシクラメン
石坂園を語る際、欠かすことができないのがシクラメンです。シクラメン、ミニシクラメン、ガーデンシクラメン合わせて40種類を作っています。オリジナルのシクラメンも生み出しています。
取材時はちょうどシクラメンの育苗中でした。冬の声を聞くと種をまき、ビニールをかけて保温管理します。3月にはポットあげをして植えつけます。6月ごろ鉢に植え、秋風が吹くころ大きな鉢に植え替えます。手間のかかる工程を踏みながら、年末年始の出荷ピークに合わせていきます。




茅ヶ崎は夏の夜の気温が高いため、北関東など夜の温度が下がる産地と比べると条件は不利です。株の大きさなどに差が出ないよう、代々伝わる経験と技術を生かし、そしてきめ細かく世話をして、高品質なシクラメンを生産しています。暑さに強い品種の導入や、花農家同士の情報交換などをしながら、地域の皆さまに喜ばれるシクラメンを栽培しています。
「地域密着」
直売・朝市を通じてのコミュニケーション
地元で3代続く花卉農家である石坂園。地域には長年通い続けるお客さまが多くいます。
農園では、散歩がてらや買い物帰りにでも、気軽に立ち寄れる雰囲気づくりを大切にしています。常連さんから「他で買った花よりも元気に育った」、「長く咲いてくれた」と喜ばれることが最大のやりがいだと、隆治さんは顔をほころばせます。
ガーデニングの初心者にはアドバイスもするし、育て方を質問されれば丁寧に答えます。店頭に来て、苗を手に取って選んでくださるからこそのお客さまとのコミュニケーションです。それが直売の強みであり、対面販売によって作られる地域密着の形です。





地域密着のもう一つの実践が「茅ヶ崎海辺の朝市」です。毎週土曜日の午前8時から9時、茅ヶ崎公園野球場の駐車場で市内14軒の農家が出店し、朝市を行っています。石坂園もそこに参加し、地域の皆さんとの交流を図っています。
朝市では鉢花のほかに、寄せ植えが人気です。寄せ植えの作製は奥さまのあやさんが手がけます。潮風が届く庭はもちろん、ベランダなどでも四季折々の花を楽しめる寄せ植え。しかも、茅ヶ崎育ちの花ですから、人気なのもうなづけます。あやさんの元気で親切なトークとあいまって、お客さんたちからも親しまれています。
「明日を見据えて」
地域貢献と今後のビジョン
石坂園のある場所は、太い道路から一本入った路地の奥。駅前や幹線道路で大量販売するようなスタイルではありません。むしろ、地域の中にしっかり根を張り、信頼され、愛される園芸店を目指しています。「一鉢からでも気軽にガーデニングを楽しんでもらいたい」という思いで、JAや市役所の寄せ植え教室などの機会を、積極的に持つようにしています。
そのアイディアの一つがワークショップ。例えば、「子ども向けの寄せ植え体験」で子どもたちが土に触れる機会を独自で作り、未来のお客さんを育てたい、と隆治さんは夢を広げます。




お客さんと直接コミュニケーションできる直売という強みを生かして、「花への愛情」を原動力に、地域に根ざした農園づくりに邁進(まいしん)する石坂さん。その姿勢がとてもすがすがしく、また頼もしいものに見えました。
石坂園
◎住所/〒253-0086 茅ヶ崎市浜之郷412
◎営業時間/9:00~12:00・13:00~18:00
◎アクセス/バス JR東海道線茅ケ崎駅北口5番乗り場から
- 茅45・46系統 小谷行き
- 茅53・54系統 寒川駅南口行き
登象(のぼりぞう) 下車徒歩5分































