神奈川県水道記念館
水と遊び、水道を学べる体験型ミュージアム
水道記念館と館長の千葉祐一さん
現役時代に活躍した巨大なポンプ!
なるほど! 寒川は、神奈川県の真ん中です
県営水道発祥の地、寒川
無料で気軽に楽しめる水道記念館
寒川町営プールの近くにある、神奈川県水道記念館。このレンガ造りのレトロな洋館は、無料で遊んで学べる穴場スポットです。
「実は、寒川には神奈川県営水道初の送水ポンプ所があったんですよ」と教えてくれたのは、水道記念館館長の千葉祐一(ちばゆういち)さん。
このエリアの水道の歴史は、昭和初期から始まります。当時、人口が増え始めた湘南地域では生活用水の確保が大きな課題でした。とくに海沿いの地域は井戸水の質が良くない傾向がありました。湘南地方の1市9町からの要望を受けて昭和11年に寒川に浄水場が造られました。そこに送水ポンプ所が建てられ、西は大磯から、東は逗子・葉山や浦賀までの水の供給を担いました。
現在の記念館は、当時の送水ポンプ所を生かしたもの。記念館の前には、実際に使われていた大型ポンプが飾られています。「この大型ポンプ8機が建物の中にあり、湘南地域全体へ送水していました」と館長さん。
その後、さらなる人口増加に合わせて、現在の寒川浄水場が整備され、近隣の水道を支え続けています。
地図で見ると湘南エリアの真ん中にある寒川。暮らしを支える大事な拠点が、今も昔もここにあったんだな、と学びました。
1階はアクアプレイランド
親子や友達とゲーム感覚で競争!
館長さんに、館内を案内していただきました。まず入口で出迎えてくれたのは、重厚な共用栓、「アクアバー」。これは、水道が創設された明治の中頃の「獅子頭共用栓」のレプリカです。「各家庭に水道が普及する前は、道路の辻にこういった共用栓があって、みんなで水道水を使っていたんです」と館長さん。水道記念館の来場者は、ここで自由に水を飲むことができます。
せっかくなので、共用栓からコップに水を注いで飲んでみると、浄水したばかりの冷たくておいしい水でした。
1階は、水のことを遊びながら学べるアクアプレイランドです。
鍵盤に手をかざすと、水を入れたガラスの管が音階を奏でる「水のシロホン」がありました。ポロロンと柔らかな独特の音がします。管を満たす水の量で、音階が変わるんですね。
奥にあるのが、「子ども達には、これが一番人気です!」と館長さんが太鼓判を押す「アクアガンシュート」。強力な水鉄砲2機が据え付けられていて、前方にある水車を狙い撃ち。命中するとクルリと水車が回り、得点が入ります。
30秒の制限時間内にどちらが多く得点できるか?という対決型ゲームなのですが、水車をうまく回すためには水を噴射する角度・強さにコツがあり、夢中で水鉄砲を撃っていると30秒はあっという間です。子ども同士はもちろん、親子や夫婦で熱中する人が多いのだとか。
アクアガンシュートの横にあるのが、科学の世界では有名な「アルキメデスのポンプ」です。ハンドルを回すと、筒の中のらせん状のスクリューが回転して、水が上部に汲み上げられます。古代の哲学者アルキメデスが開発したとされ、今もコンクリートミキサー車などで同じ原理が使われているのだそうです。
グイッと体重をかけてハンドルを回して、自分の力でポンプを作動できます。ぐんぐんと筒の中に水が揚がっていくのが、楽しくもあり、不思議でもある体験遊具です。
館内の天井付近には、1階、2階にぐるっと金属製のレールが巡らされている「ボールコースター」があります。銀色の小さなボールがレールの上をスーッと走っていくのを見るのが楽しい遊具です。「実はこれは水の循環をイメージしているんですよ」という館長さんの言葉の通り、耳を澄ますとボールがコンベアで1階から2階に運ばれた後に、ゴロゴロという雷の音、ザーッと降り出す雨音が聞こえました。地上を循環し、蒸発して空に戻り、雨となって再び地上を潤すイメージだったんですね。
親世代にはちょっと懐かしい、アナログ感のある遊具が多いアクアプレイランド。自分の手で機械を動かせるアナログならではの手応えがあり、デジタル機器に囲まれている今の子ども達にはむしろ良いのかも、と思いました。
ちなみに、同フロアには赤ちゃんや小さなお子さんが靴をぬいで自由に遊べるスペースもあります。乳幼児がいるファミリーも、ゆっくり楽しむことができます。
遊具がいっぱいのアクアプレイランド
できたての冷たいお水、おいしかった〜
ドレミ!ドレミ! 上手にできるかな?
さあ、水車を狙って競争しよう!
館長、お上手です!
他にも見どころ満載! 小さなお子さんも安心です
そこには、謎の3本の管が!
土の中で何が起こっているのかな?
空いた穴の大きさで水しぶきの量が違います
神奈川県水道記念館ならではの
ユニークな「漏水体験」をぜひ
2階へ上がる前に、「こちらもぜひ、体験してみてください」と館長さんが案内してくれたのが、記念館裏側の屋外スペースにある「漏水体験コーナー」です。
一度起こると厄介な水漏れ、暮らしの中ではあまり体験したくないけど…と思いつつ足を運んでみると、漏水体験というのは、地中の水道管で漏水が起きてしまったときの「水道作業員さんの気持ち」を体験できるコーナーであることがわかりました。
このコーナーでは、水道管に数ミリの穴が開いてしまうとどれだけの勢いで水が漏れ出てしまうのか、メーターボックスのふたを開けて実際に見ることができます。そして、面白いのが、地中で起きている漏水の音を聞くことができる「音聴棒」(おんちょうぼう)の体験。地中に刺さった棒の上の丸い部分に耳を当てると、「ザーッ」と漏水の音が聞こえます。
現在はセンサーなどによる感知システムもありますが、今でもこの音聴棒を頼りに、水道作業員さんは漏水の場所や被害の具合を判断しているそうです。
一般の科学館にはない「漏水体験コーナー」。マニアックながら、水道の担い手が運営している神奈川県水道記念館ならではの心意気を感じます。ぜひ、体験してみてください。
2階は水道探検ゾーン
神奈川の水道の歴史・仕組みを知ろう
水道の歴史や仕組みを学べる2階の水道探検ゾーンは、小・中学生の学習にぴったりです。
まず目に入るのが、寒川浄水場付近のジオラマ。相模川から取水し、ろ過池などで不純物を沈殿させて浄水する、という一連の流れがクイズと視覚で理解できます。面白いのが、ジオラマ横にある「バーズアイ」のスコープ。鳥になった気分で俯瞰(ふかん)で見たり、ズームアップしたり、ジオラマを一味違う角度から眺めることができます。
奥には、2つの町の8集落が津久井湖の湖底に眠る城山ダムの物語や、水の恵みを生み出す森「水源かん養林」の役割を学べるコーナーがありました。山の模型の内部からひょっこり顔を出してみたり、ボタンを押して村人の声を聞いたり、引き出しを開いて失われてしまった村の様子を見たりしながら、印象的に学習できる仕組みになっています。
普段、何気なく使っている水道の水ですが、歴史的な背景や自然の摂理、浄水場による丁寧な処理など、さまざまな人・恵みに支えられていることに、改めて気づくことができました。
2階の「水道まるみえゾーン」では、資料映像によって、神奈川県の水道について、さらに昔の歴史が学べます。江戸時代に使われていた、日本最古の木製水道管の展示も必見。小さなショベルカーを動かすゲームや、水道使用量にまつわるクイズなどもありますよ。
寒川浄水場のジオラマ
スコープで覗くとドローンに乗った気分!
森林は緑のダムです
山の模型にも仕掛けがいっぱい!
水道丸見えゾーンも見ごたえ充分
浅いので夏は水遊びに人気です
芝生や東屋もあって、のんびりできます
「虹製造機」にチャレンジ。見える?
うまくいくと水が踊るんですが・・・
人懐っこい笑顔の館長さん。ありがとうございました
美しい庭園で虹を作ろう
小さな子の水遊びにもぴったり
水道記念館は、お庭もおすすめです。庭全体をぐるっと囲むように流れるせせらぎは、寒川浄水場の水源である相模川をイメージして、県営水道の給水区域の各市町のゆかりの木を植えているのだとか。大きな桜の木があるので、お花見のシーズンにぜひゆっくり散策してみたいな、と思いました。
「自由に水遊びができます。夏になると、子ども達が遊びにきますよ」と館長さん。美しい芝生が印象的な庭園ですが、かわいい河童の噴水があるゾーンはもちろん、せせらぎも小さな子ども達の水遊び場として開放されています。
晴れた日に訪れたときは、「虹製造機」で遊んでみてください。太陽を背にして、シューッと大型霧吹きを噴射すると、霧の中に美しい虹が見えます。太陽の向きは、自分の影を目印にすると正確に分かります。ちなみに、虹製造機の横に水を張ったお鍋があるのですが、実はこれも水と遊ぶ道具。鍋の取っ手を両手でこすって振動させると、美しい水紋が現れます。手の加減で水紋の現れ方が違うので、大人でも思わず夢中になってしまいます。
「水道と水について、楽しみながら勉強できます。見たり、触れたり、遊んだり、さまざまな体験ができます。子どもはもちろん、大人も一緒に遊びながら学んでください」と館長さん。頭と体を使って、有意義な一日が過ごせるスポットです。
神奈川県水道記念館
◎営業時間/9:30~16:30 ◎定休日/毎週月曜日(ただし月曜日が祝日の場合はその翌日、12/29~1/3と2月第4週の月~金曜日は休業)
◎住所/〒253-0106 寒川町宮山4001
☎0467-74-3478