

『綾瀬市こどもドリームプレイウッズ』

「ケガと弁当は自分持ち」が
育む、未来を生き抜く力
綾瀬市に、子どもたちが泥だらけになって夢中になれる特別な森があります。それが「綾瀬市こどもドリームプレイウッズ」。ここは単なる公園ではありません。子どもたちが自ら考え、行動し、そして成長していくための「冒険の森」です。その森を23年間守り続けてきたのが、通称「おやぶん」と呼ばれる澁谷敏夫さんです。



「子どもが外で遊ばなくなった
時代」に始まった挑戦
澁谷さんがこの森を開いたのは、今から23年前のこと。ちょうど澁谷さんが子育て真っ只中の時期と重なります。当時はテレビゲームが台頭し、多くの子どもたちが外で遊ばなくなり始めた頃。同時に、安全を優先するあまり、子どもたちの自由な遊び場が次々と失われていった時代でもありました。
「子どもが自由に遊べるところがない。これではいけない」。社会教育委員として子どもの育成に関わっていた澁谷さんは、強く危機感を抱いていました。昔は山に入って遊んでも、誰からも文句を言われることはありませんでした。しかし、時代は変わり、どこで遊んでも「危ない」「迷惑だ」と言われるようになったのです。
そこで澁谷さんは、子どもたちが自由に遊び、のびのびと成長できる場が必要だと考えました。手弁当で始まったこの取り組みは、かつて経済学者の所有地で、竹が生い茂る山林を自分たちの手で開拓していくことからスタート。最初はボランティアも集まらず、一人で黙々と作業を続ける日々だったと言います。しかし、少しずつ子どもたちが集まり出します。何もない場所で泥遊びをしたり、自分たちで秘密基地を作り始めたりと、彼らの「遊びたい」という本能が、この森を形作っていきました。

子どもたちが夢中になる、手作りのハンモック。


「危なく作ろう」という逆転の発想と「ケガと弁当は自分持ち」の哲学
「子どもたちが考えたことを、大人がもっと頑丈に、そして『危なく』作ろうと思ったんです」。澁谷さんの言葉は、一見すると矛盾しているように聞こえます。しかし、そこにはこの森の根幹をなす哲学が込められています。
「ケガと弁当は自分持ち」。この言葉は、単に「自己責任」を突き放すものではありません。「自由には責任が伴う」という、子どもたちが社会で生きていく上で最も大切なことを伝えるメッセージです。
森の中の遊具は手作り。一見して「危険そう」に見えるものばかりです。しかし、それは子どもたちが自分で「危ないか」「大丈夫か」を考え、判断する力を養うため。例えば、ハンモックは、慎重に乗らないとバランスを崩して落ちてしまうように作られています。斜面の上と下の木に渡されたジップラインのようなロープは、滑車ではなく木の枝の持ち手で自分で体を支えるものですが、3歳の子どもも滑り降りることができます。



下:ママの顔くらいの高さのネットで遊ぶ小さな子ども。怖がりながらも、楽しそうです。
「登ったはいいけど、怖くて泣いている子もいる。でも、どいてやれって言っても、子どもたちはプライドがあるから嫌なんだ。自分でやり遂げるしかない」。
そうして一度、恐怖を乗り越え、滑り降りることができた子どもたちは、自信に満ちた表情に変わると言います。さっき泣いていた子が「もっと高いの作ってくれよ!」と頼んできます。幼い頃は引っ込み思案だった子が、この森で遊び続けた結果、小学校の連合運動会で代表選手になったというエピソードも。遊びを通して、子どもたちは体力だけでなく、挑戦する勇気や、自分で考える力を身につけていくのです。
「おやぶん」と呼ばれ、多世代に渡るコミュニティーを育む
澁谷さんは、子どもたちから親しみを込めて「おやぶん」と呼ばれています。「先生でも棟梁(とうりょう)でもない。子どもたちを叱ったり、大人たちから敬語で話されたりするのを見て、いつの間にかそう呼ばれるようになったんです」。その呼び名には、子どもたちの成長を厳しくも温かく見守る、澁谷さんの人柄が表れています。
この森は、年齢や立場を超えた多様な人々が集うコミュニティーの場でもあります。3歳の子どもから93歳のお年寄りまで幅広い世代が訪れ、多世代交流が日常的に行われています。


畑で取れた野菜を使った収穫祭、この森で採れた竹で手作りする門松作り、春のたけのこ祭り、そして夏のそうめん流しなど、四季折々の行事も盛んです。特に、7メートルもの長さのそうめん流しには、子どもたちの歓声が響き渡ります。これらの活動は、子どもたちに自然との触れ合いや、協力することの大切さを教える貴重な機会となっています。
市との連携、そして未来へ
「変わらない」意志
長年、有志のボランティアによって運営されてきたこの森ですが、去年、綾瀬市が土地を取得。今年の4月からは「NPO法人ドリームプレイウッズ」が市の指定管理者となり、運営費や人件費の支援を受けられるようになりました。しかし、澁谷さんの「基本理念を変えるならやらない」という条件は一貫しています。
「過度な安全対策は行わず、今の状況を維持することが最優先」と澁谷さんは言い、「自己責任」の原則を貫いてきました。



「この森で育った子たちが、大人になってここを作ってくれているんです」。リニューアルの工事を行った業者の職人は、かつてこの森でヤンチャをしていた子どもたちでした。彼らは「昔、ここで遊んでいたんです」と静かに語り、感謝の気持ちを込めて作業に取り組んでくれたと言います。また、大学の学生たちが必須科目として活動に参加するなど、学びの場にもなっており、視察も多くなっています。
もちろん、すべてが順風満帆ではありません。現在の自由度と危険度のバランスを維持すること、創設者世代の高齢化に伴う継承問題、そして安全性の向上を求める声と自由な遊び場を維持することの両立は、常に澁谷さんの頭を悩ませる課題です。
それでも、澁谷さんは生き生きとした子どもたちの笑顔を糧に、今日もこの公園を守り続けています。綾瀬市こどもドリームプレイウッズは、これからも子どもたちが「自分で考え、自分で行動し、自分で責任を負う」という、未来を生き抜くための大切な力を育む場として、その独自の道を歩み続けることでしょう。

綾瀬市こどもドリームプレイウッズ
◎住所/〒252-1107 綾瀬市深谷中7-3071
◎入園料/無料
◎開園時間/平日10時~17時
◎定休日/年中無休(年末年始・工事時等除く)
◎バス停「綾瀬農協前」下車5分
◎駐車場/近隣駐車場を利用
◎ホームページ/https://www.play-woods.com
◎TEL/080-7346-4650(ドリームプレイウッズ)・0467-70-5655(児童青少年支援課)
『あやせローズガーデン』

一年中咲き誇る、
愛と情熱の結晶
綾瀬市の光綾公園内に2025年5月1日、新しい憩いの場として「あやせローズガーデン」がリニューアルオープンしました。開園して間もないながらも、既に地域の方々の憩いの場として親しまれ、訪れる人々を魅了しています。このガーデンを彩るのは、バラ育種家として名高い河合伸志さんが手掛けた、緻密でありながらも開放感あふれるデザインです。以前は森のようだったバラ園を、河合さんの監修のもと、さまざまな植物とバラが共演する「一年中楽しめるガーデン」へと生まれ変わらせました。園内は、まるで異なる国々を訪れたかのような11のゾーンに分かれ、訪れるたびに新しい発見と感動が待っています。



ガーデンを育む情熱:
スタッフとボランティアの想い
「あやせローズガーデン」を日々の愛情で育むのは、ガーデンスタッフの石原久美子さんたちです。石原さんは毎日ガーデンに出て、自らの手で手入れをしながら、植物たちの小さな変化を誰よりも楽しんでいる様子が印象的です。
石原さんはバラの魅力について、「手入れをすればしっかりと応えてくれる、育てがいのある植物」だと語ります。木と花と草のちょうど中間のような存在で、花だけでなく葉も楽しめ、つるバラのように長く伸びるものはアーチや垂れ下がるデザインなど、創造性豊かに誘引できる点も魅力だと言います。「同じデザインは二度と作れない、その場で生まれる芸術性がある」という言葉には、バラ栽培への深い愛情と探求心が垣間見えます。


そして、このガーデンを支えているのは、スタッフだけではありません。週に一度活動する地域のボランティアさんたちが、草取りや花がら摘み、石拾いといった地道な作業にも積極的に参加し、共にガーデンを育んでいます。オープン以来、石原さんたちは来園者との交流も大切にしています。植物の名前や育て方について気軽に質問できるよう、いつも園内で作業を行い、声を掛けやすい雰囲気を作っています。その優しい人柄が来園者にも伝わり、地域に愛される施設へと成長を続けているのです。
秋は「香り」と「色」を楽しむ至福のシーズン
風が心地よく通り抜ける開放的な「あやせローズガーデン」は、これからの季節、特にその魅力を増します。そう、秋バラのシーズンが到来するのです。
バラの最盛期は5月。つるバラも含む全てのバラが咲き誇ります。が、石原さんの一番のおすすめは秋だと言います。春のバラが「量」の美しさならば、秋のバラは「質」の美しさ。秋は寒暖差が生まれるため、春よりも色が鮮やかで、一輪一輪が美しい姿を長く保ちます。春は気温が高く日焼けしやすいため色があせやすい傾向にありますが、秋はより深みのある色合いを楽しめます。


下:秋は、さわやかな空気に芳醇なバラの香りが立ち込めます。


下:ピースフルガーデンで出会えます。
そして何よりも、秋は芳醇な香りが格別です。夏の暑さで香りが飛びがちなバラも、秋の穏やかな気候の中では、本来の深く豊かな香りを存分に放ちます。特に午前10時頃は、最も香りが感じられる時間帯だとか。園内には、河合さんが育種したここでしか見られないオリジナル品種「ル・デパール・ド・アヤセ」も咲き誇ります。市民からの公募で名付けられたこのバラは、秋にはレンガ色に近い深みのある色合いを見せ、訪れる人々を魅了します。子どもたちの目線からも花が楽しめるよう、低い位置からもしっかり花がつくように管理されています。家族での写真撮影にも最適なスポットが随所にあります。
「一年を通して来てほしい」
ガーデンの願い
「一年を通して、あやせローズガーデンに足を運んでほしい」と石原さんは語ります。夏でも心地よい風が抜けるガーデンは、散歩気分で気軽に立ち寄るのに最適です。夏は四季咲き性のバラが二番花として咲き、その小さな花々にも豊かな香りが宿ります。春の華やかな表情、夏のバラの生命力、秋の鮮やかな色彩と香りの豊かさ、そして冬薔薇(ふゆそうび)とも呼ばれるはかない美しさーー。季節ごとに異なる「花の表情」を楽しむことができるのが、あやせローズガーデンの大きな魅力です。


近所の綾瀬市民は、毎日の散歩コースとして利用し、中には週に3回も足を運ぶ常連さんもいるそうです。家族連れも多く、子どもでも花と一緒に写真が撮れるよう、低い位置にも花がしっかり咲いています。まだオープンしたばかりのこのガーデンは、これからも進化を続けます。周辺の木々が成長すれば、さらに落ち着いた空間となります。河合さんによって緻密に計算された植栽デザインのお陰で、来年、再来年と「毎年異なる景色が楽しめる」という、成長するガーデンになります。訪れるたびに新しい発見があるーー。空間の中に時の変化を取り入れる公園なのです。
新しい発見と地域との共生:
未来へ咲き誇る庭園
あやせローズガーデンでは、新しい品種の導入や、秋の紅葉シーズンまで農園を管理する計画など、いつもチャレンジを続けています。来園者への植物の育て方のアドバイスや情報提供も積極的に行い、訪れた人が自宅でもバラや草花を育てるきっかけになることを願っています。



病気に強い品種を厳選しているため、農薬使用を最小限に抑え、安全・安心な環境で花々を育てています。こうした取り組みは、地域コミュニティーとの関わりを深めています。風通しの良い立地を生かし、植物が風にそよぐ様子も景観の一部としてデザインされていて、五感で自然を感じられる工夫が随所に凝らされています。
四季折々の美しい景色の中で、心安らぐひとときを過ごせる空間です。訪れるたびに異なるバラや草花の表情に出会え、きっと何度でも足を運びたくなるはずです。
あやせローズガーデン
◎住所/〒252-1108 綾瀬市深谷上4‑5234(光綾公園内)
◎入園料/無料
◎営業時間/9:00~16:30
◎定休日/毎週火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
◎バス停「観音入口」「上深谷」下車2分。駐車場あり
◎ホームページ/https://www.instagram.com/ayase.rosegarden/
◎TEL/0467‑70‑5627(綾瀬市役所みどり公園課)・管理棟:0467‑38‑3090